現場で愛用される2大車種の違いに迫る
建設現場でよく見かける商用車、トヨタ・ハイエースと日産・キャラバン。建設業者の馴染みの社用車として高い人気を集める。
そんな2モデルだが、実際はどちらの人気が高いのか。感覚的にどちらが多いかわかっている人も多いかもしれないが、実態はどうなのだろうか? 販売店への取材や市場調査を行ってみた。
「ハイエース」と「キャラバン」といえば、“日本を代表する商用車”としてトップに君臨するモデル。
1967年、トヨタ自動車から「トヨエース(現在も発売されている1トントラック)より小型の乗用車」というコンセプトのもと発売されたのが初代ハイエースだ。
それから遅れること6年後の1973年、日産自動車からキャラバンがリリースされる。そこからはご存知の通り、「建設業界で重宝されるバン」という覇権を争うライバルモデル同士として、40年以上に渡ってしのぎを削ってきた。
ブランド力とメンテしやすさでハイエースが圧勝!

工務店など都内の建築関係企業に「ハイエースとキャラバン、どちらを所有されていますが?」とリサーチを行なった結果、ハイエースが84%、キャラバンが16%という大差があることがわかった。
大方の予想はできたかもしれないが、なぜここまで差がついたのだろうか? ハイエース圧勝の理由について、ハイエースとキャラバンの両車両を取り扱っている『FLEX ハイエースさいたま店』に勤続30年という大ベテラン、店長の石原守さんに聞いた。
「圧倒的なブランド力ですね。昔から販売されているトヨタのヒット商品で、長年愛用している職人さんも多いです。壊れにくいイメージがすごく強い。もうひとつの理由がハイエースはモデルチェンジしてもエンジン構造が複雑化しないため、メンテナンスがしやすいことでしょう。デビューした頃と変わらずシンプルなままなので、非常にメンテナンスしやすいんです」。
商用車をプライベート兼用にする人が増えてきた
以前はビジネス用として、プライベートとは別にハイエースを購入する人が多かったそうだが、最近は公私兼用で乗る職人も増えているという。
「“ビジネス車寄りに偏らせたくない”とおっしゃる方は多いです。当店ではコンプリート車が人気です。アルミホイール、ロングスポイラー、ナビ関係、インテリアパネル、シートカバーなど……自由にカスタムすることで、オリジナリティーを出すことができます」。
現に、プライベートや趣味に特化する形でバンを保有する人も非常に多い。
大工、左官、設備などさまざまな職種がひとつの現場に集うことが多い建設業界でも、こうしてカスタムされた自身の愛車を会話に挙げて、人間関係の構築に役立てている人も少なくない。
ハイエースとキャラバンの違いを見る
ハイエース・スーパーGL

同店で特に支持されている「ハイエース」は、5ドアで2〜5人乗りと乗車人数の可変ができる「スーパーGL」。どうしても荷物や道具が多くなる建設現場で使うクルマとしては最適な仕様だ。
「フロアが低く設定されているので、荷物の出し入れが楽。現場では重宝されています。全モデルに言えることですが、ハイエースはアフターパーツが豊富にあるので、長年乗ることができるのは強みですね」。
キャラバン・NV350

「キャラバン」は2017年にマイナーチェンジした「NV350」は、インテリジェント エマージェンシーブレーキの標準装備拡大やインテリジェント アラウンドビューモニターの新設定など、機能性の高さに特化。
「建設業界では5人乗り5ドアの『プレミアムGX』が人気です。購入時のメリットはハイエースよりも若干リーズナブルなこと」。
確かに人気車種の新車価格を比べても「キャラバン・プレミアムGX」が、2,963,400円(メーカー希望小売価格)に対して「ハイエース・スーパーGL」が3,640,000円(メーカー希望小売価格)と大きく異なるが、そのデメリットである“価格”がメリットに転じることがあるという。
「ハイエースは先行投資としては高くなりますが、売却時に値段がつきやすいのがポイントです。クルマを使用しなくなった時に、財産としてカウントできるのはオーナーさんにとって嬉しいポイントではないでしょうか」。
「ブランド力」か「進化する挑戦的な姿勢」か!?
アンケートでは、歴史が長い「ハイエース」が、“ブランド力”、“アフターパーツの豊富さ”、“壊れにくさ”を理由に圧倒的な支持を集める形となった。
そのすべてがオーナーにとってチェックしたいポイントのひとつ。それらをしっかりクリアし、信頼を裏切ることなく新しいモデルをリリースしているのがトヨタ自動車だ。
対する日産「キャラバン」は、あくなき企業努力でデザインや利便性を高めている。常に進化を続けているので、これからどう「ハイエース」と対抗していくのかに注目したい。