「職人に力仕事をさせると赤字」OAフロア施工30年のベテランの知恵

OAフロアの隆盛を見届けてきた専門施工会社

30年以上、OAフロアという専門的な施工業務を請けてきた有限会社キッス。もともとは生地の輸入販売を生業としていたが、世の中にOAフロアが出回り始めた頃から施工業務に乗り出し、ここ数年はホテルや美術館など華やかな施設の中庭や屋上庭園の施工にも携わるようになった。

OAフロアとは、電話線やLANケーブルを床下に配線するための二重構造の床。フリーアクセスフロアとも呼ばれ、オフィスや商業施設でよく採用されている。しかし近年はOAフロアの施工会社が減ってしまい、キッス社を含む少数の施工業者が全国の現場を駆け回っている状況だ。

ライバル会社が倒産する中、キッス社はどうやってその苦境を乗り越えてきたのか。なぜ美術館やホテルなどの庭園工事に挑んでいるのか。長年OAフロア施工に携わってきた桑原良幸さんに話を聞いた。

父親との喧嘩がキッカケでOAフロア工事業へ

全国を飛び回るOAフロア工事会社を営む桑原良幸さんが、大阪で事業を立ち上げたのは約40年前。18歳のとき、父親との喧嘩がきっかけで大学の学費を工面する必要に駆られたからだった。

「なぜかアルバイトをするっていう発想がなくて、店を出してしまったんです(笑)。最初はテキスタイル、インテリアの店を出して、生地の輸入・販売をしていました。OAフロアなんてなかった時代です。それこそ商店街の一角にあったような布団店、畳店と同じような形からのスタートでした」。

インテリアを扱う中で発生する設置工事が、桑原さんの施工業務との最初の接点。しかし、それは仕事の一部に過ぎず、主軸は輸入・貿易関連の仕事だった。

ところが、あるメーカー企業に務めていた後輩からの勧めで、OAフロア工事も扱うようになる。当時、猫も杓子もOAフロアと言わんばかりに様々なメーカーがOAフロア商品を開発していた。桑原さんはメーカー専属の職人からOAフロア施工の技術を教えてもらうことになる。

「あくまで下地材なので、いわゆる職人技っていうほどの熟練の技術が必要なわけではありません。本当にやる気があるなら、誰でも身につけられますよ」。

全国対応が可能なキッスのOAフロア施工

キッスが全国対応で施工が可能な理由を語る桑原さん

紆余曲折を経て始めたOAフロア施工だが、桑原さんは現在全国各地から依頼を請ける状況になっている。ほとんど営業活動を行わず、集客はインターネット広告の出稿のみ。拠点も大阪だけだが、OAフロアの施工依頼は全国からやってくる。

「長引く不況のために多くのOAフロア専門業者は倒産を余儀なくされ、施工できる会社がとても少ないんです。ウチの場合、貿易とか他にも事業をやっていたから今まで続けてこれただけ。大きな現場へ行くと、顔を合わせる職人はほぼ一緒です。決まったOAフロア業者が全国を駆け回っている状況です」。

キッスが全国の現場でOAフロア施工に対応できている理由は、独自の現場の回し方に秘密がある。その方法で施工すれば大きな現場でも、OAフロア工事は職人が1人か2人でこと足りるという。

「職人が施工するのは、技術が必要な部分だけです。高さを調整して、綺麗に納めることが職人の仕事。力仕事とか、職人じゃなくてもできる作業を職人にやらせると赤字になります。経営視点で見ると、そのほうが利益は出やすいんです」。

詳しい手法については企業秘密らしいが、桑原さんはもっと現場が効率的に進むように、建設業全般に共通する別のトリックも使う。

「現場の人数が多くなればなるほど、必ず何名か女性を入れるんです。男はイイ格好をしたがるから、みんな頑張ってくれるんですよね。はっきり違いがあります」。

OAフロア施工を応用し、美術館・ホテルの庭園工事も

キッスでは、数年前からOAフロア施工を応用し、新たな工事も始めるようになった。ホテルやマンションのロビーの中にある庭園などで、水が流れていくようにする排水に関わる工事だ。

「下防水をして足を立てて、その上に石板を並べていくんです。その上に作られた庭園は雨ざらしになっても、水はその石板の隙間から落ちて、下の排水を流れていくようにすることができます。職人がやることはほぼOAフロア施工と同じです」。

これまでに美術館や病院、屋上庭園などの現場で施工を行ってきた。結局、同業他社と横並びになるOAフロア施工だけを担うよりも「どこどこの美術館をやりました」と自分たちで誇れる仕事は、新鮮さがあり、良い刺激になっているそうだ。

建設業への憂慮と職人不足

「現場に出ている方が無駄な時間を過ごすよりもよっぽど楽しい」と語る桑原さんも還暦を控え、長年続けてきたOAフロア施工からあと数年で引退するという。工事業は息子さんに引き継ぐそうだ。

「僕は、お酒は付き合いますけど、タバコも吸わないし、ギャンブルというギャンブルもしてこなかった。その分辞めるときはスパッと辞めて、世界中を旅行しに行けたらいいですね。いや、生き方はギャンブルでしたけど(笑)。

これからはAIが普及してくるし、5Gの時代になります。外国人労働者もどんどん入ってきていて、職人の将来は心配です。人手不足に関しては、建設業界を取り巻く環境による部分も大きいと思いますが、今いる業界内の人間もその一因になっていると思うので、そこは変わっていってほしいです」。

[企業情報]

社名/有限会社キッス

https://sustina.me/company/661279

本社所在地/大阪府箕面市白島3-6-3-203 大阪営業事務所

対応可能職種/内装床仕上工事(材工)

対応可能エリア/全国


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